こないだCharが好きだと書いたけど、
好きになったのは、ごく最近のこと。
子供のころ観ていた若いCharは、
蒼白い不健康な植物のようで、何だか気持ち悪かった。
バンドっていうのはドラムやギターが
ジャカジャカ、ドンドンうるさい音を出して、
ボーカルがシャウトして、
違う星の人たちに見えた。
たしかあれは今年のお正月の特番で
阿久悠さんの40周年記念番組をやっていて、
彼が作詞したヒット曲を歌った往年のスターたちが
次々出てきて、その曲を歌っていた。
とにかくみんな十分に歳をとっていて、
もう何年も人前で歌っていないことが明白な、
そんな歌い方をしていた。
阿久悠さんを讃える企画としては
あまり良くないのでは、とさえ思わせた。
バンドをバックにみんな何とか歌いきり、
あいまいな笑顔でおじきをして去っていく。
そんな中で登場したCharだけは、
Ovationのギターを馴染んだ恋人のように抱えて、
椅子に軽く腰かけ、
「気絶するほど悩ましい」を弾き語りで歌い始めた。
バンドのバージョンとは全く違う歌のように
曲が優しく柔らかく心に響く。
思わずテレビの前で立ち止まって
ポーッと最後まで聴いてしまった。
歳をとったCharは、ものすごく色っぽくて
彼のやっている音楽が、何も装飾されずに
そこに静かなたたずまいとして在り、
それは確固たるものだった。
変わらずにずっと音楽と向き合ってきた姿が
そこにあった。
私は音楽を始めたころから思っているのだけど、
プロであるならば、
たった一人でも歌を聴かせられなくてはいけないと思う。
それがちゃんとできるのか、
そのことを自分に問いながら、やっている。
理由はよく分からないのだけど、
とにかくそうでなくてはいけないと思っている。
Charは、そのお手本のように
私の目の前で歌っていた。
何十年も経って、彼がとても近い人になった。