心には波がある。
シーンとしている凪(なぎ)のとき。
太陽の光にキラキラ動いているとき。
強い雨と風にさらされて、なす術もないとき。
私は、太陽の光にキラキラが日常の1割くらいで、
凪が8割くらい。
雨風に打たれることはほとんどなくて
というか、そんな状態には耐えられないので
そういう時には心に防波堤を立てて
とことん知らん顔をする。
凪は、いいようで、良くない。
私のようにモノを創作しようとする人間にとっては…。
心がシーンとしている状態のときは
いつもどこかで焦りを感じている。
ここんとこ凪がやけに長く続いていて、
焦る気持ちも麻酔を打たれたように遠のいていって
ただぽーっと暮らしていた。
そんなある日、久しぶりにライブを観に行った。
ライブに行くと、
ステージの上の人と同じくらい、お客さんを見てしまう。
今日のお客さんは、みんなうっとりして、幸せそうで、
思わず体でリズムをとって、
すごくいい笑顔をしていた。
そんなお客さんたちを見ていたら
凪の心は突然、
トビウオがピョンピョンと舞って
日の光にキラキラした。
音楽って、こういうものだね。
そして三日後、久しぶりにクルーザーに乗った。
夜風に吹かれてビールを飲み、
絶品のオードブルをつまみながら
霧に浮かぶ月とお台場の夜景を眺めた。
この船に乗るといつも、
自分が、とても小さなポイントばかり見つめて
そこでくちゃくちゃともがいて生きてることに気づく。
そのちっちゃな豆粒は、
海風にたちまち連れ去られ、どっかに消えてしまう。
残るのは、私自身と、大切な人たちの笑顔。
それさえあれば、なんのことはない、
いくらでも生きていける。
夜風の中で、心がキラキラした。

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