夕方の駅。
疲れているときは、うんと胸をはって歩く。
駅前のスーパーで野菜を買って出て来ると
青年がギターをかきならして尾崎豊を歌ってた。
歌は尾崎の受け売りで、たいしたことなかったけど、
ギターは普通にうまい。
男の子って、なんでみんなギターをそこそこ弾けるんだろう?
いいな。
ふと見ると、かたわらで
浮浪者ふうのおばさんが彼の演奏に聴きいって、
夏に冷たいビールを飲んだときのような顔をしてる。
そうか、これでいいんだ。
重い足をピンと伸ばして、スーパーの袋をさげて
商店街を歩いていく。
ランドセルをしょった男の子が
勢いよく人ごみをぬって走っていった。
まるでモーターが体の中に入っていて、
重力なんて彼には関係ないみたいに、
タッタッタッタッ…と。
あんなふうに走れたのは
一体いつのころだったろう?
彼は、あっという間に見えなくなった。