昨日の晩、久しぶりにゆっくり読書をした。
哀しい物語だった。
長い間夫に愛人がいて、
時には暴力までふられる主人公が
幼いころ夏を過ごした高原の別荘に独りで身を寄せて
そこで過ごす数ヶ月の話だ。
彼女はそこでチェンバロを作る職人と出会い、
彼の若い恋人への嫉妬に苦しみながらも、
彼との愛を深めていくが、やがて・・
といった話で、文章も繊細で上手だし、
プロットの組み方も巧みだし、
作者の音楽やチェンバロ製作にたいする造詣も深くて
なかなか優秀な作品だと思った。
でも、深い過去を背負った登場人物同士が
お互いを求め合い、体を重ね合わせるのは
ただそこに動物的な必然性があったからに過ぎなくて
彼が男で、彼女が女で、
男も女も傷ついていて寂しくて、寒かったのだ。
そこで二人が抱き合っても、
そこから生まれるものは何もなかった。
そのことが哀しくて、
読み終えた後はなんだかシュンとしてしまった。
ふとんに入って目をつぶっていたら
わけもなく涙がこぼれてきて
しばらく声をもらして泣いた。
ロマンスはロマンスのまま、
風のように味わえばいいのだ。