元旦の昼間の電車は
とってもすいていて心地いい。
東京に住む多くの人が故郷へ帰り、
残った東京人が家でおせちを囲んでいるという事実は
こんなデジタルの時代に、
まだ日本の伝統が生き残ってることを感じさせてホッとする。
でも、電車の中の風景は変わったよ、スティーブ。
2人に1人は携帯かipodかipad.
今、目の前の若い夫婦は、赤ん坊のバギーを目の前に置いたまま
脇目もふらずゲームに没頭している、
1人1つずつ、色違いのプレステを持って。
何じゃこりゃ。
ほったらかしの赤ん坊は無表情で
バギーに取り付けられたおもちゃを
手でもてあそんでいる。
ふとその横に
夫婦どちらかのお母さんと
お姉さんだと思われる女性が座り
二人で赤ん坊を笑顔で見つめている。
次の駅が過ぎても、そのまた次の駅が過ぎても
飽きることなく、
無愛想な赤ん坊にじっとほほえみかけている。
いとおしさが泉のように湧き出して止まらないのだろう。
私が赤ん坊のとき、
こんなふうにいつまでもいつまでも
誰かが私を見ていてくれたのだろうか?
もしそうだとしたら、
その事実だけで、
この先の人生を生き抜いていけそうだ。
何かにとらわれて、
いつのまにか自分の足さえも見えなくなって
どこに立ち、どこへ向かっているのか分からなくなる。
生きることがおっくうになって
ひどく孤独だと感じる。
そんな状況に、すぐに陥ってしまうけれど、
それは、ただ単に、心の目が曇っているだけだ。
ときどき、小さな雲の切れ間から
誰かの微笑みを感じることができたら
それだけでいい。
澄んだ心の目で、
新しい一年を過ごせますように。