書くことで、いつも少なからず傷つく。
なぜ傷つくのだろう。
自分という空虚に改めて直面するからだろうか。
自分のあさましさをまたも露呈してしまい、
恥じるからだろうか。
傷ついても、また書いてしまう。
書くことでしか、次の呼吸をできない気さえして。
去年のお誕生日に、
しおりちゃん達に心をこめて祝ってもらって、
私はいい子になる宣言をしていた。
改めて、いい子になるってことはどういうことか
ここ最近いっしょうけんめい考えた。
これといって何もできない私が
いい子であるための答えは、シンプルだ。
与えられた仕事は心をこめてやりとげ、
いつも謙虚で、人の迷惑や邪魔にならないこと。
そして、家族の笑顔を守ること。
感謝をして、生きること。
一日達成しては、くじけ、また頑張ってはくじけ、の毎日。
こないだ親友の海外組がめずらしく顔をそろえて
久しぶりにみんなではしゃいだ。
昔私が結婚式をしたときの話になり、
そのときスピーチをしてくれた子が言う。
「つまり、私の言いたかったことはね、
まみはずっと私たちのヒーローで
そのまみが選んだ彼なんだから、
私達も好きになります、ってことだったの」
ヒーロー? 私が?
なんかすごい別の世界の言葉に思えた。
ああそうか、私はかつて、そっち側の世界に住んでいたんだ
みんなの愛の中で。
「なのにさっさと別れちゃってさ」と
もう一人が笑ってつっこむ。
あはあはと私も笑い、「ごめ−ん」と平謝りする。
もう一人の親友は
スピーチの彼女が万一緊張してできなかったときに備えて、
徹夜で別の原稿を用意してくれていたのだそうだ。
「でもね、今のまみには、しおりちゃんがついててくれるから安心、
あんなにまみのこと大切に思ってくれて…」
と一人が言うと
「うん、ほんとにそう」と全員が神妙にうなずく。
しおりちゃんは、母が亡くなった翌年に
私のもとに舞い降りてきた天使だ。
帰り道、あったかい気持ちに包まれながら、思う。
「ああ、私はずっとあの子達の優しい心に包まれて
健やかに生きてきたんだ」って。
疑うことや、嘘をつくことや、うらぶれた気持ちになることとは
まったく無縁に。
そんな夜は、自分の心が、あるべき場所に戻っていける。
お風呂で足の指先をごしごし洗っていると
ふと母のことを思い出した。
まだ私が赤ちゃんのころ、
きっとママは
この指先にほおずりをしたり、キスをしたに違いない。
そんな大切な指先なのに、
そんな大切なこの体なのに、
私は、なかば忌み嫌い、日々もてあましている。
ごしごしごし、力を入れて洗う。