夕暮れの帰り道。
遠くに見える家々の三角屋根が
ボンヤリかすんだオレンジ色を背景に
くっきり黒く浮かび上がる。
その背景のオレンジは
その少し上で、ちょっと白みをおびて
高い空にのぼるにつれ、
ラベンダー色にグラデーションになっている。
川沿いの道には
葉をすっかり落とした桜の木たちがたたずんで、
グラデーションの空を
細い枝の模様で埋め尽くす。
大空にくっきり描かれた黒い脈のような線たち。
まったくの枯れ木のようなのに、
かたいつぼみをぎっしりとつけていて
もうすぐワアッと花を咲かせるんだね。
寒くてマフラーを鼻まで引き上げるけれど、
気持ちは温かく満たされている。
この体という、魂の入れ物がなければ、
この風景も、寒さも、待っていてくれる家のぬくもりも
感じることはできないのだから。
幾人かの親しい人たちが
その入れ物と別れを告げて、空へのぼっていった。
私の入れ物も、やがて手放さなくてはならない日がくる。
そこに魂が閉じ込められているようで
窮屈に感じた日々もたくさんあったけれど、
残された日々を、この入れ物を慈しみながら
大切に過ごしていきたい。