駅へ続く道。
川のほとり、桜並木の下の小さな公園。
休日の昼下がり、あるいは夕方、日射しがうすれた頃、
その公園の木のテーブルに
60代くらいのおじさん達が集まって、将棋をしている。
あらかじめ約束をしてるふうでもなく、
どこからともなく集まってきて、やっている…
そんなふうに見える。
彼らはとても熱心で、
目は真剣そのものだ。
ビールを飲みながらとか、そういうだらけた態度は皆無で、
缶のお茶が慎ましくかたわらに置いてあったり、
水筒持参の人もいる。
ギャラリーのおじさん達も同様で、
腕組みをしてじっと、将棋の盤を見つめている。
大好きな風景。
公園のテーブルにおじさん達がいないと
気が抜けたような、寂しいような
そんな気持ちになる。
彼らは、きっともう定年を迎えているのだろう。
だけど、缶のお茶を傍らに腕を組むあの背中は
妻や子供や会社やいろんな荷物を背負ってきたんだなと思うと
胸の奥がずーんとする。
家の何かが壊れたら必死で修理をしたり、
重いものをたった一人で運んだり、
自分のためじゃない誰かのために、
苦い思いをたくさん飲み込んだりしてきたんだろう。
将棋の盤の上に降っていた桜の花びらは
あっという間に、緑の木漏れ日にかわり、
今はもう、秋の乾いた日射しが
ゆるやかにテーブルを照らしている。
今日も、会えるかな。