京浜ロック音楽祭に行った。
うっ、いなたいネーミング。
川崎市がやっているお祭りの一環で、
東扇島東公園という、だだっ広い埋め立て地で
トレーラーをステージにコンサートが行われるのだ。
今日はセンチメンタルシティロマンスが
トリで出演するらしい。
広ーい空。
羽田空港が近いので
飛行機が、その模様がはっきりと見えるくらい低く
ゆうゆうと飛んでいる。
でっかい建物のような貨物船が
目の前をゆっくりと進んでいく。
いくら深呼吸をしてもおつりがくるくらい、
広大な空間。
ちょっと足をのばせば、
こんな異空間があるんだなぁ。
ちいさなうれしさがプツプツと胸にはじける。
真面目な豊さんは
いつも一番最初に現場に着いている。
いつもの優しい笑顔で
むこうからやってくる。
「なんか気持ちいい所ですねー」と私が言うと
「うん、そうだね、なかなかいいよねー」とニコニコ。
豊さんって人は、いつもこんなふうだ。
明るくて、ポジティブで、
たとえどんな状況でも、それを前向きに受けとめる。
センチのムードメーカーというか、
舵取り役というか、
いちファンの私には、そんなふうに見える。
まもなくトクオさんが乗った車が来た。
私が手を振ると、すぐに振り返してくれる。
車から降りると
「おう、まみちゃん、来とったかー」とニコニコ。
トクオさんもいつも優しい。
そしてリーダーの告井さんも登場。
いつもぼくとつとしていて、
お愛想とか社交辞令とか、
その手のものとは全く無関係な人だが
何か話をするときは、ニヤッと笑って、親しげで、
ああ、温かい人なんだなぁと思う。
この日は突如センチの出番が早まって
メンバーが準備を始める。
当然リハーサルもなし。
どこからともなくみんなが集まって、
直前までタバコをふかしたり、
雑談したりして、
出番が来ると、とっととステージに出て行く。
ガーンと最初の音が響いた。
センチメンバーのサウンドを
野口さんのタイコがビシッとシメて
さらにキレが加わる。
かーっ、みんなうまいなぁ、いつも思うけど。
それにしても、さっきまで全くの別モードでいたのに、
こうしてすぐ音楽に「入れる」ってどういうこと?
私には神業に思える。
やっぱ生粋の音楽人なんだなぁ。
ふと後ろを見ると、
さっきよりうんと観客が増えている。
みんな笑顔で、首をのばしてステージを見つめて、
リズムに体を揺らしている。
1曲2曲と曲が進めば進むほど、
センチはお客さんをつかんで
サウンドの中に丸め込んでいく感じ。
私なんていつのまにか
「夏の日の思い出」を大声で歌っていた、告井さんと。
なんてこった。
コンサートホールで観るものもちろんいいけれど
センチはやっぱ、野外コンサートがすごくいい。
通りがかりの人、つまりセンチのファンという人じゃなくても
瞬間に、最高にハッピーな気分にしてしまう。
ふと気づいてみたら、
自分がステージに上がって歌うようになって
丸10年が経っていた。
あのまま銀行員でいたら決して出会えなかった人達に
たくさん出会えた。
センチの人達は、その筆頭だ。
先輩などと呼ぶのもおこがましい、
私にとっては孤高の人々。
彼らは、音楽をやる喜びをいつも鮮明に思い出させてくれる。
30年以上経っても、色あせないその魂。
私の灯台として、ずっと見つめていきたい。