久米島から帰って来た。
毎朝早起きしていたのに、
帰ってきたとたんに10時まで寝てしまった。
寒いなあ、東京は。
一週間いない間に、すっかり秋になってる。
空港に着いて帰りの電車に乗るとき、
汚い街だなぁと自然に感じた。
何十年もこれがスタンダードになっていて、
気づいてなかったけれど。
昨日、久米島で道を歩いていたら、
電柱の草むらにネコが倒れていた。
友だちが「このままにしておけない」と言って
水をやったりしてみたが、
まったく受け付けず、苦しそうに息をしている。
私たちが困って立ち尽くしていると
目の前を通り過ぎたバンが、またすぐ引き返してきた。
「どうしたの?」と
日焼けした島の女性が、窓越しに心配そうに聞く。
事情を離すと、心底気の毒そうな顔をして
「私、もう行かないといけないから、
獣医さんの電話番号教えてあげる、
牛のお医者さんだけどね」と
携帯の番号を教えてくれた。
私は内心、そんな番号を聞いてどうなるのかと思ったが、
友だちが先生の携帯へ電話をかけると
あと10分ほどで来てくれるという。
先生を待っていると、
昨夜食事をした居酒屋のお兄さんが車で通りかかって、
心配そうに降りてきた。
「あれ? これ、ウチでかわいがってるノラだ、
姿見えないから心配してた」と言って
早速店の仲間へ電話で連絡をはじめた。
やがて先生到着。長靴にジャンバーの
いかにも牧場にいる牛の先生という感じ。
「たぶん事故だな、腰の骨が折れてるね」と
ネコの首をつまみあげて言う。
「僕のとこにはネコの手術をする器具がないから
明日本島から来る獣医さんに診てもらうといい。
でもね、ネコは強いから、これくらいじゃ死なないよ」
そういって優しく笑って
車から出してきた段ボールにネコをポンと入れた。
ほどなくして、居酒屋のスタッフの女性がやってきて
「じゃあ、その子、預かります」と心強い表情で言う。
何のことはないネコの救出劇だけれど、
実際こんなこと、東京じゃありえない。
私は心底驚いていた。
だけどこれが本来の人や町のあり方なのかもしれない。
人が、町が、どんどん変わっていく。
時間に追い立てられて、お金のことばかり考えて・・。
久米島は、人のあるべき姿が
そのまま残されている島なのだ。
どうか、いつまでも変わらずにありますように。
またきっと来ます。
(展望台から見た島。
向こうにはケラマ諸島も見える)