去年のクリスマス、
小学校、中学校と一緒だったチエちゃんが
「お誕生日プレゼントに」と一通のメールをくれた。
そのメールには2枚の写真が添付してあって、
1枚目には、
「卒業文集」の表紙が写っていて、小学校の名前が書いてある。
そして2枚目には、
5人の女のたちが自分の似顔絵を添えて
将来の夢について書いているページが写っていた。

一番右端、アニメタッチの三つ編みの女の子の絵。
ひゃーっ、現実をまったく無視した妄想的作品。
「山川雅美」
三つ編みの下にそう書いてある。
気取っているわりにヘッタクソな字…。

えーっ、ぜんぜん覚えてない。
こわくてその先が読めない、何と書いたんだ? 私は…。
私の子供の頃の夢といえば、
小説家になること、もしくは、パン屋さんか花屋さん。
誰に聞かれても、いつもそう答えていた。
パン屋か? 花屋か?
おそるおそる、そのぎこちない文字をたどってみる。

「私は将来シンガーソングライターになりたい」
!!!???

こ…これはチエちゃんがバースデープレゼント用に作ったんだ、
優等生のチエちゃんだもん、これくらいできる。
真剣にそう思った。
だって、ぜーんぜん覚えてないし。
そもそも小学生の私が、
シンガーソングライターというボキャブラリーを持っていたことにも
疑問がわく。
当時そう考えたことが不思議でならないし、
現実的に、それからの私といえば
頭が悪いくせに、はなはだ効率の悪いガリ勉と化し、
勉強していい学校に入ること、
なんだかわかんないけど、すばらしい大人になることだけを目指して
勉強の道以外の夢を持つという発想すらなかった。
気の毒な子供。

あげくのはてに情熱もなく金融の世界に入り込んでウロウロし、
やっと夢というものの存在に気づいたのは、もう30近く。
小学6年生の私は、あの瞬間だけ予言者だったのか。
その一行を読んだ私は、
あろうことか号泣してしまった。
あまりに様々な思いが交錯して、
理由を聞かれても説明できない。

ぐしゃぐしゃの顔でチエちゃんにお礼を書いた。
何のとりえもない、ぶさいくで、さえない6年生。
いつもふにゃっと頼りなく笑ってた、
あの子のことを思いながら。