外苑の「福蘭」に10数年ぶりに行った。
学生のころから友だちと通っていたお店だ。
メニューは餃子とシュウマイと麺類が数種類のみ。
あとはビール。
始めてクラスの男の子たちに連れていってもらったとき、
みんなが餃子とシュウマイを一人で二人前ずつ頼むのに驚いた。
ビールを飲みながら山盛りの餃子とシュウマイを
バクバク食べる店なのだ。
そこは看板も何もなく、
知らなければ通りすぎてしまうような質素な入り口、
台湾三姉妹がやっていて、みんないつも無愛想で、
ときにはイラついてるようにも見え、
それがまた店の雰囲気を引き立てていた。
社会人になってからも何度か行ったとは思うのだが、
思い出すのは学生のころのことばかり。
みんなお金がなくて、餃子とシュウマイに
タンメンをつけるのはすごく贅沢だった。
昨日は友だちが食べたいというので
懐かしさ半分で足を踏み入れてみた。
当時400円だった餃子とシュウマイは610円になり、
三姉妹は二人になっていて、
「お嫁にいっちゃったんだね」と、友人と話した。
記憶にあるのは初めて来たときの彼女たちの顔なので、
一番上のお姉さんがおばあさんになっていたら
どうしようかと少し怖かったけれど、
驚くことに彼女はほとんど変わっていなくて、
私はショックを受けずにすんだ。
台湾姉妹は相変わらずムスッとした表情で
せっせと餃子を揚げ、シュウマイを蒸し、
山ほどのにんにくを刻んでいる。
私はあれからいくつかの違った人生を送り、
ずいぶんと変わってきたのに、
彼女たちはこうして、この小さな店の中で、
ずっと餃子とシュウマイを作ってたんだと思うと
なんだか不思議な気持ちになった。
天井を見上げると、あのころと変わらないすすけた壁、
蒸気とにんにくの匂い。
相席の正面に素敵な男の子が座ったけれど
私は彼よりきっとずっとずっと年上で、
もうあのころの私じゃない。
背広姿の友人と餃子を食べてる私もまた
ずいぶんと大人に見えるんだろうなと思うと
ちょっと切なくなった。
二人前の餃子とシュウマイは二人で食べきれなくて
とうとう残してしまった。
でもタンメンは食べた、きれいに残さずに。