ダイアリを書く余裕もなく過ごしてしまった。
先日のリハーサルの日のことは、
松田さんがいつものように
きちんと日記に書いてくれていて、
それを読んでひと安心。
今回は新曲が多いのだが、
あらかじめ織川さんにアレンジをお願いしておいたので
リハが円滑に進んだ。
ライブをバンドで始めたころ、
ちょうど8年か9年くらい前かな、
譜面もまともに完成させてない状態で私はスタジオに入り、
ミュージシャンたちの失笑をかった。
歌も、まともに一曲歌いとおすことすらできなかった。
あれから、
譜面をきちんと書いてミュージシャンに渡すこと、
リハーサルの時点では自分の練習は終えていること、という
当たり前のことをやっと身につけた。
最近思うのだけど、
人生っていうのは、まさにそういうこと、そのものなんじゃないかな。
つまり、何かを少しずつできるようになること。
その繰り返し。
偉くなるとか、賞を取るとか、お金持ちになるとか、
それは単なる結果であって、
その「結果」は、結局、あってもなくてもいいような気さえする。
そこまでの過程で、自分がどんなふうに歩いたか、
どれくらい、何ができるようになったか、
あるいは、
何が「理解」できるようになったか、
それこそが「生きる」ってことの意味ような気がする。
で、それは大人になれば終了する作業ではなく、
おそらく老いて死ぬ間際まで続き、
新しくできるようになったことを
人は発見しつづけるのだろう。
ピカソが92歳で亡くなる少し前、
「やっと子供のような絵が描けるようになった」と言ったという。
この話は、いつも私の人生に勇気を与えてくれる。
窓の外は、風がびゅんびゅんと音をたてていて、
いろんな鳥がピチピチ鳴いていて、
部屋の中はどこまでも静かだ。