以前住んだことのある、とあるアパートでは
夜12時近くになると決まって
隣の部屋のご主人がマシンガンのように喋りはじめ、
何を語っているのかは分からないのだけど、
男性の低い声の響きが延々1時間近くも続いた。
そのご主人は、昼間に会ったときに「こんにちは」と声をかけても
無言で頭をコクンとするだけで、
音声を発したことがない人だった。
それゆえ、毎晩、ときには声をひっくり返すほど白熱してしゃべる彼が
とーっても興味深くて、
壁に耳を張りつけたい衝動に、何度かられたことか…。
そのたびに、小さいころから母親に言われていた
「自分がされて嫌なことは
絶対に他人にしちゃだめ」という言葉を思い出して
必死に耐えた、えらかった。
私は12時前にはベッドに入るので、
彼の声を毎日、子守唄にして寝た。
今度の家は、お隣のテレビの音がやたら大きい。
深夜までその音がなかなかやまないので、耳栓をして寝ている。
解読不明の声ならともかく、
あまりに大きいテレビの音は、
流れ出す曲のイントロクイズに正解してしまうほどだ。
昨夜は、ものすごいいびきが聴こえてきた。
そのバックで大音量のテレビの音が流れている。
お隣は年輩のご夫婦らしいのだけど、
片方が大いびきをかいて寝てる横で
片方が大音量でテレビを観ている図を想像すると
思わず笑ってしまう。
どんなご夫婦なのかな、
夫婦も年季が入ると、そんなふうにもなれるのね。
なんていうか、修行の日々だなあ。