朝の電車。
つり革につかまって立つと、目の前に座ってる女の子が
タマゴとツナのサンドイッチを取り出して
袋をビリビリ開きだした。
うわー、それを今、ここで? と思ったけど、
女の子は何食わぬ顔でサンドイッチを食らう。
となりの女の子は、
そーっと鼻をおさえながらメールをしてる。
サンドイッチ女は、背中を丸めて黙々と食べる。
電車はどんどん混んできて、
それでも、サンドイッチ続行。
お化粧もそうだけど、
その行動を今ここで、どーしてもやらなきゃならない理由を
いつも考えてしまう。
深い理由なんて、ないんだな、きっと。
純粋な欲求。
とそこへ、ヨロヨロと老夫婦が乗ってきて
私の横に立った。
サンドイッチ女の二つ隣りの女の子がすくっと立って
席を譲った。
老婦人の方が
「じゃあ、お父さん…」と言って夫を座らせようとする。
この慎ましい夫婦の愛情に
サンドイッチの隣の子も、はたと席を立って
二つ席ができた。
「あらあらごめんなさいねえ、ありがとう」と言って婦人が笑うと
「いえいえ、私、もうすぐなんで」と女の子も朗らかに笑う。
黙っていると、近寄りがたいような今どきの若者でも
みんな本当はこんないい子なんだな…と微笑ましくなる。
ふと問題のサンドイッチ女を見ると、
消えている、
サンドイッチが。
何ごともなかったように、静かにお行儀良く、
老婦人の横に座っている。
ああーーー、よかった。
どこがツボだったんだか、
ひとり涙ぐんでしまう。