パン屋さんのシールを集めてる。
パンを300円買うと一枚くれて、
台紙がいっぱいなるとカタログのいろんなプレゼントがもらえる。
(妹は「リチギだねえ、ほんと感心するよ」と鼻で笑うけど)
といっても、実はまだ何ももらったことがなくて、
シールを台紙に貼ってカタログを眺め続けて、結構まんぞく。
今日も、明日の朝のパンを買ってシールをもらい、
アイスコーヒーも買ってお店のテーブルに座り
せっせと台紙に貼っていた。
すると隣のテーブルのアロハシャツ着たおじいちゃんが
「お嬢さん(と聞こえた!)、これあげますよ」と
シールを差し出すではないか!
こんなリアクションしていいのかと思いつつも
「きゃーっ、うれしい、いいんですかー!?」と素で喜んでしまった。
おじいちゃんは、さらにシールを数枚、
黒い皮の小銭入れから出してくれる。
ゴツくてしわしわの指が、小さな小銭入れの中を
一生懸命さぐっているのを見ていたら
なんだかジーンとしてしまった。
思わずおじいちゃんとアイスコーヒーを酌み交わして
世間話でもしたい気分だったけれど、
それもいかがなもんかと思いとどまり、
本を広げてクールにコーヒーを飲んだ。
でも読書には集中できぬまま、
もう一度ちゃんとお礼を言わなきゃ、って
そればかり考えてしまう。
たかがシールだけど、
そういう人間のふれあいってあまりなくて、
なんだかとってもうれしい。
昔はもっとあったんだろうな。
この街は、みんなポーカーフェイスだもん。
時間が来たので席を立って
「ありがとうございました」とペコリと頭を下げたら
おじいちゃんは「いえいえ」と優しく笑ってくれた。
今日はいい日だー、なんて足どりも軽くなる。
人生って、そんなもんだよな。
そんなもんでいいじゃないか。
ちっちゃなシアワセでつないでいくの、
それもポジティブ。