家にあるいくつかの鏡のうち
私が秘かに「美人鏡」と名づけてるものが2つある。
つまりは美人に見える鏡。
女優さんはそこそこの年齢になると
皆、ライティングにこだわるというけれど
まさに光は救世主、
光の角度や色、明度によって、顔は全然違って見える。
その絶妙なポジションにある2つの鏡は
自分が意気消沈、もしくは過度の疲労状態にあって
間違いなく老け込んだ顔をしているときにも
そこそこいいところを見せてくれる。
ちょっと理知的だったり、ふんわりやわらかい感じだったり。
で「まあ、いいじゃない、がんばりなさいよ」と
鏡の中の私が言ってくれる。
とはいえ結局のところ、どの鏡に映る私もぜーんぶ同じ私。
その見え方の違いは、心の目のコンディションが大きく係わっている。
美人鏡じゃない他の鏡は、
あまりに率直でイジワルである。
その鏡の前に立つとき
「さあ来い、負けるもんか」という気迫や前向きさがあれば
「うん、悪くない、大丈夫」と思えることもあるけれど
気持ちが後ろ向きだったり弱ってるときは「ああ、ひどい顔‥」と
その正直さに簡単にやられてしまう。
結局、人生はそういうことでできているんだと思う。
ふと街ですれ違ったある人を、不幸そうだと感じる場合もあれば、
頑張って前向きに生きているように思えて、
なんだか元気をもらえることもある。
現実というのは一つのようで一つじゃなく、
みんな、それを違う色で見ている。
だから人生の色づけは限りなく自由で、
この自分自身にゆだねられている。
さあ、師走だ。
きれいな色で、街を、日々を、見ていこう。