先日、シティバンク時代の先輩の奥様からメールが来た。
彼が50歳のお誕生日を迎えるので
一緒にご飯を食べませんか?と。
彼には、二人で食事をする約束になっているらしく、
奥様がナイショで友人を招待しているのだった。
その先輩というのは、学生のときから音楽をやっていて
腕並みはプロ級。
ライブ活動も頻繁にやって、ものすごい集客力がる。
私が銀行員だったころ、唯一音楽の話ができる人だった。
私が、音楽をやるので会社を辞めると言うと、
「バカだな、考え直した方がいいぞ。
音楽なんて、給料もらいながらやればいいんだから」と
親身になって説得してくれたっけ…。
昨日、そのご夫婦の馴染みのチャイニーズレストランに
集まった友人は、なんと40人!
彼の音楽仲間も、楽器や機材を持って集まり、
私もボーカルマイクを持っていき、
みんなでステージを作る。
親戚である前進座の女優さんも、
踊りを披露するために美しい着物姿だ。
やがて仕事帰りの彼がタクシーでレストランに到着。
バンドがハッピーバースデーを演奏し、
40人の拍手で迎えた。
扉を入るなり、彼は面食らって
反射的にもう一度外へ出ていってしまった。
だけどやがて恥ずかしそうに入ってきて、
時おりジョークも交えながら、
みんなにきちんとお礼の言葉を述べた。
長年、世界を股にかけてビジネスをやっているだけあって
こういうところはさすがだ。
昔自分がいた場所には、こういう人がたくさんいたことを
思い出した。
彼は私を見つけて「まみも来てくれたのかー!」と、
喜んでくれて、私もうれしくなる。
次々とおいしい中華料理が円卓に並び、
バンドでジャズが演奏され、私も歌い、美しい舞が披露され、
ご夫婦は各テーブルを回って歓談し、
琥珀色の幸福な時間がゆったりと流れる。
やがて奥様お手製の巨大なバースデーケーキが登場。
彼女は女性雑誌でも大活躍の、著名なお料理の先生で、
この日のケーキも素晴らしかった。
しっとりとした薄いスポンジの中に
ほんのり甘いチョコクリームと
たっぷりのバナナが包んであって、
生クリームでデコレーションされ、
トップには真っ赤なイチゴ。
中央には「50」の形をした巨大なロウソクが
灯っている。
彼が照れながらロウソクを吹き消すのを見て、
このご夫婦の20数年の日々に思いをはせた。
笑顔ばかりではいられなかったかもしれない。
でも今夜のこの時間は、
そんないろんな時間の集大成で、
さまざまな色彩が混ざり合った、深くていい色合いに
染められていたのではないかと思う。
彼は今日からまたニューヨークに出張だそうだ。
「飛行機、落ちないといいけど」と笑っていた。