しおりちゃんが、お誕生日のお祝いにと、ご飯に招いてくれた。
「24日は遠慮するとして、25日でどう?」と言って。
年末で仕事が忙しいときだろうに、本当に頭の下がる思い。
時間ぴったりに、しおりちゃんちのチャイムを鳴らして
すっかり馴染んでしまったお家の中へ。
猫のミーナもちゃーんとお出迎えしてくれる。
いつものようにテーブルには二人分の食器が並べられていて、
今日はどんなごちそうが出てくるのかとワクワク。
早速私の好きなシャンパンを出してくれて、
これまた大好物のカニとグレープフルーツのサラダも
ドーンとテーブルの上に。
これはしおりちゃんにとっても「スペシャルな」サラダなのだそうだ。
私はそのスペシャルをもう何度もいただいている、
この幸福、忘れるべからず。
例によって遠慮もなく、くつろぎきって
おいしい前菜をパクパクいただいていると
しおりちゃんちのチャイムが鳴る。
彼女がさっき
「新聞屋さんに払うお金がお財布にないかも」と話してたので、
「よかったら、私あるよー」とか言いつつ
また大粒のカニの身をパクリ、シャンパンをゴクリ。
ふと顔をあげると、
「お誕生日、おめでとー!」と言って
シゲちゃんとハマちゃんが立っている、花束を持って。
おっどろいたー、1センチくらいほんとに飛び上がった。
で、言ってしまった第一声が
「プロのミュージシャンがクリスマスに
こんなとこで何やってんの?」
エヘへと二人は笑っている。
「人がほんとに驚くと、マジで飛び上がるんだなぁ」なんて、シゲ。
私は酔いが一気にまわる。
実は一ヶ月も前から、
しおりちゃんがこの企画を仕込んでいてくれたそうだ。
シゲちゃん、ハマちゃんの二人は
クリスマス前後の過密なスケジュールを何度も調整してくれたらしい、
あんなこと言ってごめん。
いやあ、ほんとにスペシャルなお誕生会です。
スタジオとかライブハウス以外で見る二人の青年は新鮮で、
そうすると、しおりちゃんまでもが改めて孤高の人に見え、
なんで私が、こんなプロのミュージシャンと
名うてのフリーランスライターの女性に
お誕生会をやっていただいているのか、
なんとも不思議な気持ちになるのであった。
この日のメニューは、すき焼き。
テレビで見るような霜降りの美しいお肉が
たっぷり用意されている。
昔、私が貧乏でいつもお腹をすかせていたとき、
しおりちゃん夫妻がすき焼きをふるまってくれたことを思い出す。
だんなさんが築地からわざわざ
おいしいお肉を買ってきてくれたんだった。
あの日のことは一生忘れない。
ジューシーでとろけるようなお肉の味わいに
男子二人は狂喜乱舞。
このあとヤツらはシャンパンをひと瓶飲み干したあと、
日本酒を一升空け
(ヴーヴクリコと、お取り寄せの大吟醸だぞ、おい)
いいかげん連れて帰ろうかと思ったところで、
しおりちゃんがまたワインを開けようとするので
気が狂ったかと思ったが、時すでに遅し。
そして絶好調となったシゲちゃんに
こんこんと、いろいろお説教をされる、誕生日なのに。
「お前は…」って何度も言ったな、お前。
でも、なんだかうれしかったな、
その内容はどうであれ。
今どきこういう人はなかなかいません。
かくして時は終電ぎりぎりになり、
私たちは、しおりちゃんに気ぜわしくおいとまを告げると
駅までゼーゼーいって走り、
3人で気持ち悪くなりました。
こう書くと、マヌケなオチになっちゃうけど、
みんなの気持ちが本当に心にしみた。
私には1のプレゼントをもらう資格しかないのに、
10くらいもらってしまったような、そんな気分。
私をそういう気分にしてくれるのは、いつもしおりちゃんだなぁ、
今年も一年、本当にありがとう。
来年はもっといい子になります。