こんなときに日記を書いてるなんて、
なんてヤツだろう。
引っ越し屋さんがもうすぐ来るのに
やることは山ほど残ってる。
まともに原型をとどめているのは
このダイニングテーブルだけ。
あとは舞台の大道具小道具を
完全にバラしてしまった。
もう心のお別れは済んだ。
そんなに寂しくない。
結局むこうの家に行っても
同じ道具に包まれて暮らすんだもん、
私の温度がしみこんでるものばかり。
なんて、自分をちょっと励ましてみたり。
デスクの窓から見る広い空が好きだった。
周囲は大きな平屋が多かったせいか
空が遠くまでのびのびしていた。
むこうに見える大きな2本の木の揺れで
その日の風の強さが分かった。
たくさんの葉っぱをつけたその木は
強い風の日でもゆーらゆら揺さぶられながら
平然としていた。
何も考えられない日、考えたくない日は、
その2本の木とその上の空を
長い時間ぼーっと見つめてた。
そのうちきっと、
なんとかなるような気がして。
妹からメールが来た。
「引っ越し日和だね、手伝いにいけなくてごめん、
腰に気をつけて」だって。
結構いいヤツだな。
そういえば、この前のそのまた前の引っ越しのときは
私が2トントラックを運転して
妹と二人きりで引っ越しをしたんだっけ。
トラックの運転、めちゃ怖かったなぁ。
途中の道で偶然父の車とすれ違ったのに
ぜーんぜん気づかれなかった。
うん? となると、あれは
父親に内緒の引っ越しだったんだろうか?
えーい、もういいや、昔のことだ。
あの日、腰が悪い私を気遣って、
洗濯機やタンスを
妹がほとんど一人で家に運び入れてくれた。
小さいのに怪力で俊敏な妹と、
大きいのにひ弱でのろまな姉。
昔からこのセット。
姉妹二人で引っ越しをやってるのを見て
通りがかりのおばさんに
「あら、二人だけでやってるの?」と
目をまん丸くされたっけ。
まったくロックな人生だなぁ。
まっ、あのころに比べれば
だいぶフツウになったけど。
いつまで続くのかねぇ、ローリングストーン。
きっと続く。