いつのころからか、
どうにも調子の悪いとき、というのがあって、
特に原因となる出来事もないのに、
心が着地点をなくして薄暗い中をさまよってしまい、
そっともがき苦しんでいることがある。
それは、ほんの数日でおさまることもあれば、
何ヶ月か続くこともある。
そこを抜けると、急に空が晴れ渡ったようになって
にわかに呼吸が楽になり、
生きてる喜びをまた思い出す。
でもまたいつか、それがやってくることを知っている。
今日、ピューピュー吹く北風にそんな自分を重ねながら
とぼとぼと歩いていたら、ふと思い出した。
この人生で初めて、
心がしっかりと地についていて、
何というか、揺るぎない自分を感じていた時期があった。
ほんの少し前、震災の後だ。
あのとき、強いショックと悲しみからまだ立ち直れないでいたけれど、
心はこの人生で初めて、とても静かで平穏で、
そして何より、この人生で一番、謙虚だった。
生き残ったことの意味、
生きていることの素晴らしさ、
それを毎日、体がじんじんするほど感じて
自分を含めたすべての命を
何のフィルターもかけずに慈しむことができた。
人がこの世に生まれてくるときに
たぶん平等に授けられるであろう愛という感覚を
100%この身から発することができていた。
命さえあれば、他に何もいらない。
そばにいてくれる家族や友人を大切にして、
自分は自分なりに小さな果実を少しずつ実らせていければ、
なんと人生は素晴らしいものかと思っていた。
震災から2年がたとうとしている今、
おろかな私は、あのときの感覚をもはや忘れつつあって、
目先の小さな不安ばかりにとらわれて、
たぶん自分のつま先の石ころしか見ていない。
自分を愛することなど、とうていできていないし、
そんな人間に人を愛することはできない。
バカだなあ、私って。
また1から出直しだ。
ふらふらと迷い込んでしまったこの道から
まずはしっかりとあの場所へ戻らなければ。
何やってんだ。