寒い雨。
晩ご飯のお買い物は電車に乗って
ひとつ隣の駅ビルへ行く。
駅の中だから歩く距離は最寄りの駅まで。
便利といえば便利。
地下の食料品売り場は夕方のお買い物客でいっぱい。
家族連れやカップルがたくさん。
休日だし、一緒にゆっくり食事をするのだろう、
ワイン売り場や、チーズ売り場、
お鍋の食材売り場などがにぎわっている。
みんなおだやかな幸せの表情を顔に浮かべて
買い物をしている。
この表情っていうのは、
手に入れたばかりの幸せというより、
あたりまえの幸せの中で
ゆったりくつろいでる感じ。
これがいいんだな。
すこし昔、こんな表情をしている人たちが
うらやましくて、
自分だけ違う場所にいるようで、
ものすごく寂しかったことがあった。
そのことをふと思い出した。
人のたくさんいる場所へ行くと
どんどん孤独になって
まわりの音が聴こえなくなってきて
喧噪という静寂の中にポツンとなる。
あのころだって
私を愛してくれてる人はたくさんいたのに
私が心を閉ざしていたんだ。
自分がはったバリアを打ち破って外へ出たいと、
もがいたのかもしれないけれど
うまくいかなかった。
そして暗いトンネルの中をとぼとぼ歩いていた。
私は今みんなと同じ喧噪の中にいて
その幸福の表情をフラットな気持ちでながめられる。
そんなごく当たり前のことが
どうしてもできない時というのも
人生にはある。
だけど必ず、トンネルは抜けられるよ。