今朝も目覚めスッキリ。
相変わらずあまり寝てないのにな。
今日は登山。
「もののけ姫」のモデルになった森へ。
メンバーは、親子と私とけいちゃんとまゆちゃん。
今日のガイドは、チモリ君。
チモリ君は、チカラ君の弟だ。
彼は、屋久島の植物に関するあらゆる知識を持つ、
正規の資格を持ったガイドで、
ガッチリした体にヒゲ、真っ黒な人懐っこい笑顔、
とても頼りがいがありそう。
屋久島には、東京から来たにわかガイドさんも多くいて、
道案内しかせずに
ツアー客の細かい質問には
お茶を濁してしまう人も多いとか。
チモリ君は、とってもおもしろい人で、
ずーっと何かしゃべっている。
屋久島の杉やこけの話を詳しくしてくれて
そんなときは小学校の先生みたいなのだけど、
その他はだいたい下ネタ。
突然そっちのネタをふられるので油断ができない。
珍しくおしゃべりが止まったかと思うと、
「♪わたしのぉ〜お墓の前でぇ〜
泣かないでください〜」などと
つやのあるテノールで歌ってたりする。
私たちは、終始笑いころげながら
きつい斜面を上っていく。
ふつう、長い登山の道中では
お客さんが疲れて飽きてしまうことが多いため、
ガイドさんがそんなふうに楽しい方が
みんな最後までもつのだそうだ。
これも、屋久島で育った野生のチモリ君だからできるワザ。
目の前に次々とあらわれる、もののけ姫のシーン。
木々の間からふりそそぐ木漏れ日、
それに光る川のせせらぎ、
みずみずしい緑のこけの群生、
深い森、そのにおい…。
目の前に広がるあまりにも大きな自然を、
アニメーションで一つの完全なる作品にしてしまう…
感服するなぁ。
心に抱いた感動を形にすること、
難しくて難しくて、
いまだその場所へたどりつけない。
自分の荒い息づかいだけが、やたら響いてくる。
数時間の山道との格闘のあと、
やっと頂上の「太鼓岩」に到着。
頂上は人が5人も乗ったらいっぱいになってしまう岩肌。
この岩の一部をたたくと、太鼓のような深い音がする。
なぜだ? 神秘的。
頂上に座って、眼下の壮大なパノラマを眺める。
少し曇った山々は、緑で描いた墨絵のよう。
ふと気づくと、まゆちゃんが泣いている。
溢れ出る涙を手の甲でぬぐいながら、子供のように。
彼女の心の中の澱が、
この山の空気に溶け出しているのかな。
好きなだけ、泣くといいよ。
下山はだいぶ楽だった。
相変わらずチモリ君の冗談に笑いながら
みんなでトントンと下っていく。
途中、スッテンコロリンもしたが、心は軽い。
ここ数ヶ月、東京ではなぜか息苦しくて
考えてみると、呼吸をあまりしていないのだった。
努めて深呼吸を何度もして、どうにか平静を保つ、
そんなことを繰り返していた。
でも屋久島に来てから、それもすっかり忘れていた。
おいしい空気が、
小さな細胞のすみずみまで満タン。
登山口まで帰ってくると、
チモリ君が握手をしてくれた。
「達成感」って、すんごい久しぶり。
みんなでチモリ君の運転する車に乗り、
途中、小さなスーパーでお弁当を買う。
大きな河原へ連れていってくれて
そこで豪快にお弁当を食らう。
冷めてまずい唐揚げもエビフライも
あまりの空腹にぺろりと平らげてしまった。
水着を来ていたので、バッと服を脱ぎ捨て
川に飛び込む。
この、バッと脱ぎ捨てる快感よ。
冷たくて、澄んでて、寛大な川。
夢中になって泳ぎ回っていると
潜水してきたチモリ君に足をグワッとつかまれる。
キャーキャー逃げ回り、水しぶきの中で笑う、笑う。
8歳の夏。
日焼け防止って何だっけ?
チモリ君ツアーの終わりは、みんなでソフトクリーム。
ここで、けいちゃんとまゆちゃんとお別れ。
初めて会って、少ししか一緒にすごさなかったけど
もうずっと友達だったような気がする。
またすぐに、会えそうな気がする。
宿に帰ると、
博士が待っていてくれた。
「カヌーに行こう」と言う。
カヌー? みんなでイチッチニって漕ぐやつ?
博士と親子と私の4人で、今度は別の川へ。
オールをハイと渡されて、
「まみちゃん、これね」とカヌーをひとつ、あてがわれる。
えっ、ひとり?
「あの、カヌーってやったことないんですけど…」と言うと
「あっそう」と、それだけ。
「はい、頑張ってー」と冷たくつきはなされ、
乗るときからもうビショビショ。
ただえさえ腕力ゼロなのに、
スタートから遅れを取る。
友達が別のカヌーから私にカメラを向けて
「まみ、顔が必死ー!」と笑いころげている。
みんなに遅れること数十メートル、
だけどなんとか目的地までたどりつく。
広大な川の上流だ。
ふと見ると、急斜面の岸の茂みに、
サルの家族がいる。
何やってんの?って顔で見てる。
カヌーを岸に寄せ、また川に飛び込む。
もう水の子だー、乾くヒマなし。
この島では、しみじみ感動するとか、
何か物思いにふける、とか
そういう大人な感情は生まれるヒマもなくて、
本当に小学生の夏休みなのだ。
走る、泳ぐ、笑う、お腹すく、食べる、寝る。
そんな自分に、さらりとなれてしまう。
夜はまた、私達のダイニングルーム、
「いその香り」へ。
今夜も、お寿司、お刺身、天ぷらをおなかいっぱい食べる。
チカラ君は今日も威勢がいい。
お店の人たちも、いつも笑顔で元気で、
たくさんの旅行者たちの心とおなかを
あったかく満たしてくれる。
毎夜毎夜、超満員の「いその香り」。
今夜は、少し長く寝られそう。
ていうか、元気なの、こわいくらいに。
森の神様はいる、と感じる。
森の光.jpg
風の谷のナウシカの
「オーム」のモデルになったとも言われる。
オーム.jpg
この杉の下をくぐりながら願いごとをすると
かなうという。
くぐり杉.jpg
これだけのったらもういっぱい。
頂上の「たいこ岩」
たいこ岩.jpg
夕方からは、カヌー。
さあ、出発!  まだ余裕の表情。
カヌー出発.jpg
無我夢中で漕いでいたら、こんな所まで来ました。
カヌー川全景.jpg
そしてまた、泳ぐ。
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