先週末、ふと思い立って
友だちとその息子と3人で熱川の温泉に行ってきた。
久しぶりに新幹線に乗ったけど、
清潔で、時間に正確で、速くて、
やっぱすごい。
新幹線に乗るといつも
日本人としての誇りを感じる。
旅館に着いて部屋に通されると、
着物姿の年輩の仲居さんが浴衣を持ってきて、
「背のお高いお客様がいらしたと聞いたので
Lサイズの浴衣をお持ちしたんですよ、
身長は…175センチくらい?」といきなり。
友だちと思いきりウケてしまったけど、
私はありがたくLサイズを借りることにした。
旅館に泊まるのが不慣れなので、
三つ指ついて挨拶をしてくれるような仲居さんに
チップをあげるべきなのか否か、
いい大人が二人で悩んでしまった。
でも、もともと高価な宿ではないし、
常識はずれの安いチップを包んで失笑をかうくらいなら
やめとこうという結論に至る。
ああ、薄れゆく日本の伝統。
そこには温水プールもあり、
数々の温泉があって子供は大喜び。
晩ご飯の前に3人でプールで泳いでから
部屋のテーブルに並んだ数々のごちそうを食べる。
こんなときいつも、今ここにいない大切な人に
食べさせてあげたいなーと思う。
旅番組みたいに旅館で豪華な食事を食べるというのは
いまだにちょっと分不相応な気がしてしまう。
「生意気に…」と
私の中の誰かが必ずツッコミを入れるのだ。
この旅館には「ジャングル風呂」というのもあって
ジャングルような木々の中に数々のお風呂があり、
滑り台なんかもある。
石でできた滑り台にいくと
小さな女の子達が楽しそうに滑っていた。
「ねえ、これ大人もやっていいの?」と聞くと
「いいんだよー、ほら、やってごらん、楽しいよー」と言ってくれる。
湯気でモクモクなので、
顔もよく見えず、恥も外聞もなくて
数分後には大人も子供も入り交じって
キャーキャー言いながら
ザッブーンと次々に滑り落ち、
みんなが親戚みたいにゲラゲラ笑い合った。
これって、いいよ。
7歳の男の子は
「明日の朝も絶対お風呂入ろうね」と言って眠る。
翌朝、グーグー寝ている彼の耳ともで
「ねえ、お風呂入る?」とささやいたら
「入る!」と言ってピョンと飛び起きる。
母親は「あたしは、いい」と布団の中からうめいているので
彼と二人で行くことに。
エレベーターでフロントに着きドアが開くと
そこには従業員がズラリと並び、
「おはようございます!」と礼。
寝起きの私は超はずかしかったのに、
彼はものすごく喜んで
「ねえ、またあそこ通ろう、
今度は何て言うかな?」なんて言ってる。
朝は露天風呂に。
今朝は誰もいなくて二人きり。
海を眺めながらお湯につかっていると
彼がしみじみと
「ねえ、また週末に来ようね、温泉」と言う。
うまいんだ、これが。
彼とはずっと赤ちゃんのころから
一緒にお風呂に入っていて、
自分の子供のようにかわいい。
だけど一体いつまで一緒に入るのかな。
彼のたっての希望で、バナナワニ園に行く。
ものすごい「昭和」な場所で、
この時代の流れを全く無視してるところが素晴らしい。
たっぷりノルタルジーに浸るならぜひバナナワニ園へ!
何十匹ものワニは岩のように動かず、
この退屈をどうしてくれようかと思ってるとこに、
やがて「オハヨー、ワッハッハ!」なんて喋るオウムが登場、
超王道の芸に、
人々は救われたように大笑いする。
私も涙がにじむほど笑ってしまった、ふしぎ。
だけど彼は、バナナワニ園がたいそうお気に入りで
「楽しいねー、楽しいねー」を連発。
熱海に寄って、魚料理を食べさせる店で昼食。
彼とトイレに行ったら、おじさんたちが数人並んでて
「ボク、先に行くか?」と言ってくれたのに
彼が「ううん、大丈夫」ときっぱり答える。
おじさんは「そう? じゃあお先にね。ごめんね、お母さん」と
私に言う。
「お母さんだってー」と彼がニヤニヤして私を見上げる。
産みの苦しみもなく、授乳の寝不足もなく
いきなりこんな美形の息子がいたら、超ラッキーだ。
かくして、ホカホカの温泉まんじゅうをかじりつつ
帰途についた私達、
彼との愛もまた深まりました、おしまい。