冬になると必需品のブランケット。
母の思い出の品、ナンバー1。
ほんとは、ショールなのか、ひざかけなのか、
でもとにかく大判でモコモコした物体。
10年近く前、
二人で自由が丘をぶらついていたとき
突然母が姿を消した。
これはよくあることで、
馴染みの店でおしゃべりしてることもあれば
ほんの数十分の間にパチンコで大勝ちして
「ごはん食べに行こ!」なんて
はしゃいで戻ってくることもある。
またかと思いつつも
そのへんをブラブラして待っていると
案の定、母が向こうからニコニコ顔でやってきた。
手には大きな毛布みたいのを抱えている。
「これ、買っちゃった、まみにいいかと思って。
半額だったの、半額!」と勝ち誇ったように言う。
「グレーとブラウンがあったの、
まみはブラウンだなと思って」
母はいつも私のシュミを勝手に決めつける癖があって
子供のころから私の悩みの種だったけれど
もうそこはあきらめることにしていた。
グレーがよかったな。
「で、いくらだったの?」と聞く私。
「半額で1万5千円!
だってモトは3万円だよー、イタリア製だって!」
「・・・」
母はいつもこうだった。
もってるお金はパァーッと使ってしまう。
私は呆れてものが言えず、無言でそれを受け取った。
でも、このブランケットはあたたかい。
どんな寒い冬の日も
私をあっためて守ってくれる。
からだも、心も。