電車の中で高校生の女の子が
「彼に贈るセーター」みたいな本を見ていた。
膝の上にはユザワヤの袋もある。
毛糸も準備万端なわけだ。
バレンタインデーなんだな、もうすぐ。
こんな私でも大学生のときは
セーターを何枚か編んだ。
それもかなり凝ったデザインの。
今思うと信じられない。
作り目(って言うんだっけ?)の方法さえ
もうすっかり忘れてしまった。
あのとき全くの初心者だったのにもかかわらず、
なんであんな物が作れたんだろう?
何かにとりつかれたように、
せっせとがんばることができた。
とはいえ妹の場合、
彼氏のセーターは半分以上、母の作品だった。
娘が投げ出した彼氏のセーターを
「まったくもう」と言いながらスイスイ編んでる母と、
それを嬉しそうにながめてる妹は、
変わってると思った。
編むこと自体は、本の説明にそって地道にやれば
できなくもないのだけど
一番難しいのは、
相手のサイズにぴったりなものに仕上げることだ。
いくら計算をきちんとやっても、そううまくはいかない。
というわけで、彼氏は
ちょっと袖の短いのとか、
襟ぐりがビヨーンと伸びたのとか、
妙にブカブカのとか、
そういうのを着なくてはならない。
そんな自分の駄作をちょっと気恥ずかしげに
学校に着てきてくれたりすると
ほんのり愛を感じたものだ。
そんな記憶もあって、
電車の中で不格好なセーターを着ている男の子を見ると
愛おしく感じてしまう。
結構イイヤツだな、コイツ、と思ってしまう。
あと何週間かすると、
そんなボーイズが、またちらほら出現するのかな。