レコーディングも終盤に入り、
今日はいよいよ最後のミュージシャンに来てもらう。
チェリストの平山織絵さん。
生の弦楽器を自分の楽曲に取り入れるのは
ずっと前からの夢だった。
大きなホールでカルテットの人達と共に
自分のバラードを歌う光景を
今でもたまに夢見る。
「噴水」という曲は、当初から
ピアノとチェロ主体の曲にしたいという思いがあった。
長い年月を経て再会したかつての恋人同士が
ずいぶんと遠い所へ来てしまった自分達を
静かに悟ってゆくストーリーだ。
吹き上げる噴水の華やかさと
そこにいる彼らの心の静けさの対比をモチーフにした。
きゃしゃで色白で透き通るような雰囲気の平山さん。
そのチェロの音は深く、母のような包容力があった。
その弓の第一声を聴いたとき、
もうずっと前からこの音はここにあるべき音だったのだと感じた。
初めて聴いたのに、
それは私が何度も頭の中でなぞっていた親しみ深い旋律だった。
流れるチェロの音色を聴きながら、
清らかな泉に深く沈んでゆくような気持ち、とても心地よく。
細井豊さんのピアノはもちろんのこと、
中野督夫さんの温もりのあるギターが
この曲にさらに深みを与えてくれている。
人の温度に満ちた曲。